鈴木酒造店「故郷ふたつ」を開発するプロジェクトにおいて、株式会社ガッチはプロジェクトのプロデュース、全体の企画設計、補助金の申請書作成・実績報告までのサポートを提供した。さらに、採択後は、プロジェクトをアシストした。
- ふたつの故郷に抱かれた酒蔵 -
海の男酒「磐城壽」を看板に掲げる鈴木酒造店には、ふたつの故郷がある。
ひとつは、天保の時代から200年近く酒造りを行ってきた福島・浪江。そして、東日本大震災での避難をきっかけに、事業再開した山形県・長井。「故郷ふたつ」には、鈴木酒造店のふたつのふるさとへの想いが込められている。
福島第一原子力発電所から7kmの海をのぞむ蔵で酒造りを続けてきた鈴木酒造店。震災で避難を余儀なくされ、身を寄せたのは山形。鈴木酒造店は、この地で事業を再開することとなる。
後押ししたのは、二つの奇跡。震災前に研究目的で「福島ハイテクセンター」に預けていた「酒母」から酵母を取り出すことができたこと。そして、後継者不足で酒造りを諦めていた東洋酒造株式会社とのご縁があったことだ。鈴木酒造店は、東洋酒造を引継いで「株式会社鈴木酒造店長井蔵」として、2011年10月に営業再開した。
- 浪江での酒造りを祝う貴醸酒 -
長井蔵での酒造りが軌道に乗っていった鈴木酒造に、2021年に浪江での業務再開のチャンスがやってくる。「道の駅なみえ」に隣接する「なみえの技・なりわい館」に、公募事業者として「鈴木酒造店 浪江蔵」が入居することが決まったのだ。
「故郷ふたつ」は、長井蔵での復活を経て、2021年に浪江で酒造りを再開した鈴木酒造が醸造した祝いの酒。水ではなく酒で酒を醸造する、とろみのある濃厚な貴醸酒だ。
仕込みに使ったのは長井蔵での1年目に醸造した日本酒。雪室の貯蔵施設で寝かせていた酒を、浪江蔵で醸造することで「故郷ふたつ 海」、翌年には浪江蔵で醸造した酒を長井蔵で仕込み「故郷ふたつ 山」が完成した。
海を渡った「故郷ふたつ」
ふたつの故郷への思いと、二拠点の酒蔵で運営する鈴木酒造へのエールを込めて、ガッチ株式会社は、ブランディング、ネーミング、パッケージデザインをつくりあげた。ストーリーや味わい、マーケティングが受け入れられ、「故郷ふたつ 海」はタイのミシュラン星付きレストランでも提供されている。
「貴醸酒の面白いところは、若返っていくところです」と語る鈴木酒造店5代目の鈴木大介氏。長い間寝かせて酸化し熟成された酒が、再仕込みすることでもろみの還元作用によって若がえる。震災を経て10年以上が経った。ふたつの故郷に抱かれ、生まれ変わった鈴木酒造店の挑戦はまだ始まったばかりだ。
▼鈴木酒造店 公式HP▼
http://iwakikotobuki-namie.com/